第三百五十三段 甲子温泉
昔、男ありけり。今も男ありけり。
その男、福島の名湯、
甲子温泉の「大黒屋」へと行きけり。
「日本の秘湯を守る会」の会員の宿にて
歌を
阿武隈は 冬近みかも 川沿ひの
ブナことごとく 葉を落としたり
ほの暗き 湯屋にランプの あたたかき
明かりのあれば 静かに浸る
くつろぎて 浸るいで湯の 窓辺より
阿武隈川に もみぢ浮く見ゆ
大岩の 割れ目よりいで湯 ほとばしり
注ぐ湯舟は 溢るるにまかす
と 詠み 「日本の秘湯を守る会」の
スタンプ帳四冊目の二番に印をいただきけり。