第三百五十四段 三河碧南
昔、男ありけり。今も男ありけり。
その男、碧南へ行きけり。行きて歌を
空海の 作と伝はる 大黒天
三面六臂を 珍らしみあがむ
空海の 作かと疑ひ いだけども
商売繁盛に 参る人多し
大黒天 毘沙門天に 弁財天
現世利益を 願ふひとびと
碧南の 街角とほり 見つけたり
「心のアクセサリー数珠」とふ看板
と 詠み 大黒天・毘沙門天・弁財天に
現世利益はもとより来世利益を
欲深きかと思ひつつも願ひけり。