第三百四十七段 新幹線よ、ゆつくり進め
むかし、男ありけり。今も男ありけり。
その男、平成二十八年の秋、東京へと新幹線にて行きけり。
熱海を過ぎし頃より秋雨となりけり。秋雨に近景の篁
遠景の山々 美しと見遣りて、歌を
秋雨に 烟る山なみ 見て飽かず
新幹線よ ゆつくり進め
と詠み、近代日本の物質文明の象徴である
新幹線の持つ利便性のひとつの「速さ」も
時には考へものと思ひけり。
ただ、その深層心理には急がぬ旅の余裕が
あると思ひけり。