新編・伊勢物語 第三百四十段 木曾の馬頭観音 星原二郎第三百四十段 木曾の馬頭観音 昔、男ありけり。今も男ありけり。 その男、平成二十八年の初秋の頃、木曾御嶽山の麓の 道を通りて、道祖神と共に馬頭観音像、多くあるを 拝みて、歌を 馬方が 愛馬喪ふ かなしみに 馬頭観音 建立(た)てしにあらむ 道の辺の 馬頭観音 苔むして 読み難たけれど 往時を語る と、詠み 人馬一体となりて、働いたであらうことは 想像に難くなく、その男も供養にと野の花を供へ 懇ろに手を合はせけり。