第三百二十五段 蕎麦の薄焼き
昔、男ありけり。今も男ありけり。
その男、平成二十八年の秋の盛りの頃
惚れたる女の誘ひに乗りて信州は安曇野へと行きけり。
その帰り蕎麦集落の或る店へと入りぬ。
定番の笊蕎麦と見慣れぬ品書き
「蕎麦の薄焼き」あらば試しと注文し
食し歌を
信州の 山形村の 唐沢の
蕎麦「山法師」の 薄焼き絶品
蕎麦の粉の 薄焼きピザに 似てゐたり
味噌が具と載り 焦げ香ばしく
と 詠み 一枚を二人で分け合ひ食べ
その男の佳き店への御礼の言葉
「また来む」と店主に伝へ
店を去りけり。