第三百二十一段 安曇野の古代の争ひ
昔、男ありけり。今も男ありけり。
その男、平成二十八年の秋の盛りの頃
信州は安曇野へと行きけり。
遠き昔、この地方にて縄文系と弥生系の人々の間の
争ひに思ひを馳せて
歌を
田村麻呂と 争ひ敗れし 大王の
無念は泉と なりて噴き出づ
壮絶なる 戦ひの後に 斃れしと
聞き伝へ言ひ伝へ この地に残る
よみがえるを 恐れたる由 引き裂かれ
胴のみ眠る これの古墳
と 詠み 怪物の容姿と伝へられ来し訳と、
事の真相に思ひを馳せつつ、
魏石鬼八面大王の供養と懇ろに掌を合はせけり。