新編・伊勢物語 第三百四段 鰻屋の床の間の古代鏡 星原二郎第三百四段 鰻屋の床の間の古代鏡 昔、男ありけり。 今も男ありけり。 その男、或る日たまたま行きたる鰻屋の 座敷に上がり 床の間に古代鏡 置かれてあれば 歌を うなぎやの 床の間無造作に 一面の 古代の鏡 置かれてありぬ この鏡 如何なる経路を 辿りてか 主に質せど 知らざりといふ と 詠みて 鰻屋を立ち去りしかど 古代鏡の事 しばらくは忘れ難く過ごしけり。