第三百五段 還りゆくところ
昔、男ありけり。今も男ありけり。
その男、豊川市小坂井の生まれなり。
出生地を離れ、年月は過ぎたれど中国の諺の
「狐死首丘」(狐死して、丘に首す)
を思ひけり。
その意は、狐は死ぬ時にも、なほ自分の棲んでゐた
穴のありし丘の方に首を向ける、といふ故郷を思ふ
心情にいたく心を動かされ
歌を
いつの日か わがたましひは 還りゆかむ
ふるさと野辺の かの奥津城に
と 詠み フォークソングのグループ「海援隊」の
名曲『思へば遠くへ来たもんだ』を唄はむがために
カラオケの店へと行きけり。