新編・伊勢物語 第三百三段 鏡の中の神 星原二郎第三百三段 鏡の中の神 昔、男ありけり。 今も男ありけり。 その男、鏡に神を思ひけり。神の「か」と「み」間に ある「が(我)」をいと面白しと思ひて歌を ギリシアの オルフェは鏡を 通り抜け あの世とこの世 行き来せしかな 限りなく 小さくなりて わが顔の 鏡の中の 鏡にうつる と 詠み 鏡と鏡の間に顔を置き見入りけり。