第二百九十七段 秋山郷にて
昔、男ありけり。 今も男ありけり。
その男、江戸時代の紀行文「北雪譜」を著しし
鈴木牧之に興味を抱き、その地へと行きけり。
今も聞きしに優る秘境にて
歌を
スキー場 ゴルフ場なき 秋山郷
「知足の賢者の栖」なりけり
苗場山 鳥甲山の はざまなる
秋山郷に 秋の雲見ゆ
やや熱き いで湯をいでて 飲むビール
よく冷えゐれば いふことはなし
満天の 星を仰ぎて 浸りつつ
山のいで湯の 静けさにをり
と 詠み 足るを知らざる愚者の栖の街へと
戻りて行きけり。