第二百五十四段 たらちねの母
昔、男ありけり。 今も男ありけり。
その男、平成四年二月二十七日に母を静脈瘤破裂に
喪ひてをり。爾来、年月流れけれど思ふ気持ち強く
なりて、歌を
わが部屋の 鴨居の上に ちちははの
うつしゑ掲げ 幾年ふりぬ
たらちねの 母がむかしに 詠みし歌
命日近み 読み返しをり
甲州の あばれほうとう 召しませと
命日けふは 供へまつるも
わが歌を はじめてほめて くれし日の
母の言葉は 忘れかねつも
と詠みて恋しさ募りけり。