第二百四十九段 襖絵
むかし、男ありけり。今も男ありけり。
その男、平成二十八年の夏の盛りを迎へる頃、
姉上の嫁ぎ先にお預かり頂きをりし仏壇を引き取りけり。
引き取るにあたり、仏間の襖を張り替へけり。
張り替へ、歌を
たたなづく 青き山々の 襖絵に
張り替へ了へて 仏壇を据う
と詠み、倭建の命の辞世の歌と伝はる
「たたなづく 青垣 山籠れる 大和し美し」
を思ひ、御先祖様に美しき日本の山々の姿を眺め
お過ごし願へればと切に思ひけり。