第二百四十七段 山陰の名湯
昔、男ありけり。 今も男ありけり。
その男、平成二十八年の夏、山陰を旅して
関金温泉・三朝温泉を楽しみけり。
名湯なれば湯船につかり浮かぶにまかせ歌を
金鳥の 香取線香 ともしつつ
浸るいで湯は 初めてなりき(関金)
青竹の 簀子を底に 翌檜の
湯船あふるる 真澄のいで湯
ラヂウムの 成分多く 含みゐる
三朝のいで湯は 肌に熱し
妻子晩田 遺跡は近しと 知りつつも
帰らむ時の 迫れば惜しも
と 詠みて山陰の旅情をいで湯にひたりけり。