第二百四十五段 須佐之男の命
昔、男ありけり。 今も男ありけり。
その男、出雲の国へと古代の
英雄のひとり 須佐之男の命をたずね行き
歌を
八雲立つ 出雲八重垣 須佐之男を
祭るみ社に もうでけるかな
美しき 櫛名田比売の おん顔と
板絵を拝す 八重垣神社
佐久佐女の 鏡の池の 占ひの
紙に祈りて 須賀須賀しもよ
須佐之男を 思ひつつ渉る 肥の河は
夏涸れなるか 水嵩少なし
と 詠みて古代の英雄と心を通はせにけり。