第二百四十一段 黄泉比良坂の伊邪那岐と伊邪那美
昔、男ありけり。 今も男ありけり。
その男、古事記の伊邪那岐と伊邪那美の黄泉帰り(甦りの語源)の
神話に心引かれ、思ひを馳せて歌を
伊邪那美の 鬼哭啾啾 聞こゆがに
黄泉戸大神の 上のひぐらし
伊邪那美は 道敷大神と 化りかはり
追ひ来るさまを 思ひつつ佇つ
この巌 道反之大神と いふからに
注連を畏み をろがみにけり
遠き世ゆ 語りつぎたり この岩を
隔て掛け合ふ 二柱神
と 詠みて古代を思い浮かべ
その場をしばし離れられずにをりけり。