第二百三十六段 海釣
昔、男ありけり。 今も男ありけり。
その男、平成二十八年の盛夏、三河一色の漁港近くに住む
友の誘ひに応じ、海釣へと行きけり。
沖に出ての釣に感動を覚え歌を
十噸の 第一鈴丸 風を切り
しぶきあげうつ 漁場へ向ふ
鴎数羽 従へ沖に 出でたれば
雲のあはひに 光差し初む
雲間より 朝日生まれて 明けゆけば
沖のかなたに 伊良湖崎見ゆ
伊良湖水道 越ゆれば波の 高くなりぬ
塩椎神 釣させたまへ
竿を持つ 手にてごたへの 伝はりて
糸繰りゆけば 秋刀魚釣れけり
釣針の 鉤のかたちは 海幸の
火照の命の 頃と変らじ
と 詠み久々の海釣を楽しみにけり。
因みに釣果は秋刀魚二匹、鯵三匹なりけり。