第二百三十四段 美ヶ原
昔、男ありけり。 今も男ありけり。
その男、平成二十八年の初夏、美ヶ原高原へと行きけり。
日頃の「オコナヒ」の所為かは定かならねど
生憎の嵐の一日となりけり。
早々に宿に入りて徒然なるままに歌を
列車はや 神の御坂を 越えにけり
信濃の国に 雨は降りつつ
百名山 半ば近くは 見ゆるとふ
美ヶ原の いただきの宿
星近き 宿と思へど 霧深み
なべて覆へば いたしかたなし
夜もすがら 風がうがうと 熄まざれば
寝ねがたきまま 横たはりをり
わずかなれ 朝霧晴れて 垣間見る
美ヶ原の 新緑の山
と詠み 美ヶ原高原のホテルを去りけり。