第二百三十三段 蓮華温泉にて亡友の女友を想ふ
むかし、男ありけり。今も男ありけり。
その男、平成二十八年の梅雨の明けむ頃、信州から越後へ
通づるJR大糸線に沿ひて、旅を続け蓮華温泉へと辿り
着きけり。今は亡き友と行かむ約束をせし露天風呂を
何ヶ所も巡り身も思ひも湯船に沈めつつ、歌を
亡友の女友 千国といひし 姓にして
バツイチなりしが 如何に居るらむ
と詠みけり。その後、その男 山深き白馬蓮華温泉を
去て、里へと下りけり。里にて「千国」なる女を尋ね
行きしかは定かならざるなり。