第二百三十段 鳳来寺の仏法僧
昔、男ありけり。 今も男ありけり。
その男、平成の或る年の夏、奥三河の鳳来寺周辺にて
声の仏法僧ことコノハズクの鳴き声が聞かれたとの
ニュースを聞きて喜びけり。鳳来寺の仏法僧といへば
若山牧水の「仏法僧 仏法僧と 鳴く鳥の 声を真似つつ
飲める酒かも」思ひ出され、呼応し歌を
この夏に 鳳来寺山の 仏法僧
声よみがへると 聞くがうれしき
牧水は 真似つつ酒を 飲みしとふ
仏法僧の声 直に聞きたし
と 詠み 日本浪漫派の大先輩である若山牧水と
酒を酌み交はしたきと思ひつつ、吾も鳴き声を真似けり。