第二百七段 三内丸山幻想
昔、男ありけり。 今も男あり。
その男、平成二十八年の初夏、青森は三内丸山へ行きけり。
自宅に戻り来て、その印象を歌に
群立てる 竪穴住居の この丘の
千歳のくらし 左右にながめつ
栗の木の 太き柱や 幸霊
宿れるところ 篝火を焚く
栗の木の 柱に集ふ 人々の
余響を耳に 祭り偲ばむ
幾世代 経りてかはれど 天の意に
沿ひしたがひて 生き来し人ら
遥かなる 未来にわれら 遥かなる
過去よりのものと 何を遺せる
と 詠みけり。縄文時代は約一万五千年間。その中期に
縄文の都市とも準へられ、多くの人々の営みが約千五百年間
続けり といはれる三内丸山遺跡。遥かなる繁栄の日日に
とりとめのなき事を幻想しにけり。