第二百五段 浜木綿の花
昔、男ありけり。 今も男あり。
その男、万葉集の巻四の通番四九六の柿本人麻呂の歌の
「み熊野の 浦の浜木綿 百重なす 心は思へど 直に
会はぬかも」に思ひを重ねて歌を
球根を 君ゆたまひしは 四年前
浜木綿この夏 花咲かむとす
日に向かひ 蕾は槍の 秀となれば
花の待たるる 浜木綿ひともと
浜木綿の 白き六弁の 花咲けば
会ひたき思ひ 募らせにけり
梅雨明けて 白南風わたる み熊野の
浜に咲くらむ 浜木綿の花
と 詠み 歌聖柿本人麻呂殿に畏くも
推敲を依頼せむと願ひけり。