第百九十一段 コフノトリ
むかし、男ありけり。今も男あり。
その男、平成のある年のある日、但馬の国へと行きけり。
行きて豊岡市なる「コフノトリの郷公園」に
立ち寄りけり。コフノトリは日本国の特別天然記念物
にして、絶滅危惧種なり。昭和五年には百羽まで数を
減らし、昭和三十三年より人工繁殖が始まり、先年
秋篠宮様の手により初の放鳥が行はれけり。
保護育成の様子をつぶさに観察し、歌を
夏空を 悠々と飛ぶ こふのとり
但馬の野山 豊かなればや
と詠み、ゆくゆくは但馬の野山のみならず
日本のいたるところにて、普通に見られる
鳥となることを切に願ひけり。