第百九十段 中嶋神社に菓祖を詣でる
むかし、男ありけり。今も男あり。
その男、元はといへば和菓子屋の次男なり。
平成のある年のある日、但馬の国へと行きけり。
かかる地に時の帝の命を受け不老不死の仙菓・
非時香菓を探しし田嶋守の命を祀る中嶋神社に
参拝しにけり。
かかる時、三代の家業である和菓子製造業を営みし
はらからを偲び、歌を
父と兄 在せばと思ふ 菓祖祀る
中嶋神社に 今日は詣でて
と詠みて、廃業の後ではなく、盛業の頃 詣でなば
家業継続も可能性ありしやと思ひけり。