新編・伊勢物語 第百八十九段 七味温泉 星原二郎第百八十九段 七味温泉 昔、男ありけり。 今も男あり。 その男、七味温泉に泊まりけり。 その湯その宿 いたく気に入りて 歌を 南志賀 九十九折道 登り来て 松川沿ひの 今日の宿かな 緑濃き ブナの木立に 囲まれて 南志賀なる 七味のいで湯 湯の花は ゆたにたゆたひ 松川の 瀬音聞きつつ 朝(あした)もひたる 七種(ななくさ)の 源泉持つゆゑ 七味とふ いでゆ湯の花 ゆたにたゆたふ と 詠みて再び行かむと思ひけり。