第百八十五段 屋久島にて
昔、男ありけり。 今も男あり。
その男、平成二十八年の春、気心知れたる友を伴ひ
屋久島へと行きけり。
目的はただ屋久杉にまみえむことなり。
しかして、目的を果たし屋久島の印象を歌に
異様なる 幹の姿や 杉にもつ
概念超えて 屋久杉聳ゆ
年老いて 生きゐるものを 崇むるは
わが日の本の ならひなりけり
千年に 満たぬは小杉と いふなれど
既にして持つ 威厳と風格
干潮に 現はるる渚の いで湯にて
東シナ海 眺めつつ浴ぶ
と 詠み ユネスコの世界遺産に登録されたることを
諾ひつつ、屋久島を離れけり。