新編・伊勢物語 第百七十九段 麦畑 星原二郎第百七十九段 麦畑 むかし、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十八年の五月 安城市内の麦畑の脇を通りけり。 通りて、歌を 実りたる 麦の一面 波打ちて さわわさわわと 風渡りゆく と詠み、豊かに実りし黄金の穂を眺めけり。 因みに、「さとうきび畑」は ざわわざわわ の フレーズが実に六十六回出で来しが、 <さわわさわわ>と<ざわわざわわ>の擬音の違ひは 麦と砂糖黍の違ひにとどまらず、歴史的背景に 因るものと思ひけり。