新編・伊勢物語 第百七十三段 入鹿温泉に鶯の声を聴く 第百七十三段 入鹿温泉に鶯の声を聴く 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十八年の桜の花の麗しき頃、南紀なる 紀和町の入鹿温泉に宿を取りけり。疲れゐたれば速やかに 床に就き眠りけり。翌朝 宿自慢の北山川を臨む露天風呂を 楽しみ、歌を 朝一番 耳にしたるは うぐひすの 澄みたる声の 入鹿のいで湯 うぐひすの 谷渡りの声 久々に 北山川の 谷に幾度も と、詠み ひとり旅の寂しさを慰められけり。