第百七十二段 石と岩と巌 丸山の棚田の大岩
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成二十八年の桜の花の麗しき頃、南紀なる
紀和町の「日本の棚田百選」のひとつにして、日本最大級の
棚田である「丸山の千枚田」へ行きけり。
行きて歌を
丸山の 棚田守り来し 大岩よ
幾世の話 吾に聞かせよ
千枚田 一枚ごとの 段に積む
石夥し 人のなしたる
と、詠み 慶長年間の記録に因れば
その時すでに数百枚ありし と伝はり増え続け来しが
戦後の過疎化と高齢化による荒廃も歴史の流れと
思ひけり。