新編・伊勢物語 第百七十一段 石と岩と巌 神倉神社の石段 第百七十一段 石と岩と巌 神倉神社の石段 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十八年の桜の花の花の麗しき頃、南紀なる ユネスコ世界遺産に先年、登録されたる熊野の 神倉神社へと行きけり。 行きて歌を 頼朝が 寄進せしとふ 石段(いしきだ)は 五百三十八段 あへぎ登るも 神倉の ゴトビキ岩に 立ちまして 神武の大和入り ここより始まる と、詠み 遥か昔の神話の世界に心を遊ばせた後 疲れ果てたる足を引きずり石段を降りけり。