第百六十六段 安土登城
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成二十八年の春爛漫の頃
琵琶湖のほとり、安土へと行きけり。
行きて安土城跡の山を登り
歌を
大石の きだはしなれば 傘を畳み
杖とたよりて やうやう登る
満開の 桜に雨の 安土山
天守閣跡 めざして登る
桜咲く 安土の山の 天守跡
登れば雨に 琵琶湖は霞む
と 詠み かの織田信長公が眺めた
琵琶湖の遠景を望むこと叶わぬ事を
残念に思ひつつ 天守跡を降りけり。