第百六十四段 安土城址の桜
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成二十八年の春爛漫の頃
琵琶湖のほとり、安土へと行きけり。
行きて歌を
信長の 一代思ひつつ 訪ぬれば
城跡囲み 花盛りなる
桜はな 咲き極まれば 珍しく
安土の殿の 柔和なる顔
春いくたび 信長ここに 花を見む
願ひはつひに 叶はざりけり
春雨に はや散り初むる 桜はな
死にいそぎたる 城主と思ふ
と 詠み 普段は脇息に難しき顔ばかりなる
織田信長公の印象が和らぎにけり。