新編・伊勢物語 第百六十三段 高遠城址の桜 星原二郎第百六十三段 高遠城址の桜 むかし、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十八年の四月中旬、信濃の国は 高遠城址公園の高遠小彼岸桜を賞でむと行きけり。 行きて、歌を 水鏡に 映る桜も うつくしと 見下ろし見上げ 繰り返しけり と詠み、高遠城址の桜を賞でけり。 賞でつつ、戦国時代 幾たびの城攻防の舞台となり また、元禄の「絵島生島事件」の疑惑に因り生島幽閉の 屋敷跡を訪ひ、色やや濃き桜花に思ひを重ねけり。