新編・伊勢物語 第百五十九段 石と岩と巌 石割桜第百五十九段 石と岩と巌 石割桜 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成のある年、陸奥(みちのく)は盛岡の 地方裁判所の敷地内にある江戸彼岸桜の巨樹 通称「石割桜」を拝まむと行きけり。 行きて歌を 大岩を 割(さ)き育ちゆく 力もつ いのち逞し さくら花咲く 大岩の 裂け目芽生えて 年ごとに 拡げ育ち来し 桜のいのち と、詠み いままさに満開と咲き盛る桜を仰ぎ見続けけり。