第百五十八段 石と岩と巌 大仙寺の座禅石
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成のある年、美濃の国は
八百津の里の大仙寺へと行きけり。
その寺にかの剣豪の宮本武蔵、若き日に禅の修業を
せしと伝はる石ありけり。
その男も岩上に座して
歌を
禅定の 宮本武蔵 ありありと
浮かびて来ぬる 座禅石かな
この石に 三日三晩 座りゐて
宮本武蔵 修行せしとふ
禅の師の 沢庵和尚より 大仙寺
愚堂国師を 推薦され来しちふ
と、詠み その男も宮本武蔵を思ひつつ三日三晩は
無理と知りしかば、三分少々 座して
足の痛みに耐へがたく
いとやすく諦めけり。