第百五十三段 石と岩と巌 鸚鵡石
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成のある年、奥伊勢の鸚鵡石へと行きけり。
行きて、その男も大声に、呼び呼びて 歌を
鸚鵡石 言葉石とも 響石とも
磯部恵利原 山の上にて
鸚鵡石 声の限りに 叫ぶれば
風に混じりて 谺と返る
鸚鵡石 春の疾風に まじりては
奇しき声と 聞こえ来るなり
と、詠みけり。ちなみに何を呼び叫びしかはさだかならざるなり。
一説に曰く、山男の習慣として「ヤッホーヤッホー」と。
また別説に曰く、「心底 惚れたる女へ永遠の愛を誓ひし」と。
更に別説ありて曰く「国家の繁栄と核兵器廃絶と世界の平和を
願へる祝詞を」と。三問択一のクイズの如しと思ひしが、正解があるのか?すらもさだかならざるやうなり。