新編・伊勢物語 第百四十段 舘山寺の西行岩 星原二郎第百四十段 舘山寺の西行岩 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成二十八年春の弥生、浜名湖の湖岸の 舘山寺へと行きけり。行きて西行上人がかつて修行せしと 伝はる「西行岩」に登り、浜名湖を見やりて 歌を 浜名湖は 春うららかに 波穏し 西行岩を 攀ぢのぼり見ゆ この岩に ひとり座禅の 上人の おん姿はも 近寄り難からむ と、詠み 西行上人の作の「舘山の 巌の松の 苔むしろ 都なりせば 君もきてみむ」の作を口誦し偲びけり。