第百三十七段 顕形(げぎやう)
むかし、男ありけり。 今も男あり。
その男、信心篤き男なり。しかして、顕形を思ひ
歌を
宇宙より この地球見し 飛行士は
科学を超えて 信ずるもの得きと
恒河沙の ひとこの星に 生き継ぎて
ひとりひとりの すがた異なる
しあはせの 続くを願ふは 贅沢と
ペルシャ媼が 笑みつつ語る
春の日の 遍照光に 向ひつつ
抱きあぐる吾子の 重たくなりて
いまここに 吾がかくして ゐることも
問ひ詰めゆけば 不思議なるかな
湧き出づる 吾が裡よりの 声を聴き
裡なる声に 従ひ生きむ
と詠み、奉りけり。因みに蛇足ながら
【顕形とは神仏が姿・形を現すことなり】(広辞苑より)