第百三十段 初孫は誰の生まれ代はりか
むかし、男ありけり。今も男あり。
その男のもとに、平成の或る年八月、盂蘭盆会とて親族集ひけり。
その男の母親 大正十五年十一月二十七日生まれにて
その男の初孫 平成なれど十一月二十七日生まれなり。
つまり、母親と初孫 同じ誕生日なれば、
縁の不思議を思ひ、歌を
わが母と 初孫同じ 誕生日
偶然ならぬ 縁をおもふ
いにしへゆ 輪廻転生と いふなれば
しみじみ見入る 孫の掌
握りゐる 掌ひらかせ 相を観む
初孫の幸 ひた願ひつつ
生れしより 半年まりの 孫来れば
誰に似たると 思ふ盂蘭盆かな
と詠み、まづは手相を観、人相を観、
一族の女人を次ぎて、思ひしかど
やはり同じ誕生日の、その男の母親の生まれ代はりと
信じ疑はざりけり。