第百二十九段 焼野の雉子(後半)
城ヶ入の 子安観音の 杜深く
礼も申さず 疾く去る雉子
鶴ならぬ 雉にしあれど 恩返し
後と思へば 楽しかりけり
昔話の 桃太郎が供の 雉子にて
忠義者なれば ありやと思ふ
わが娘 桃子の初産 安産を
「焼野のきぎす」と観音に祈む
と詠み、初孫の無事の出産を待ちけり。
しかれど鰥夫なれども、「鶴女房」ならぬ
姦しき「雉女房」の来訪は望まざりけり。
因みに「焼野の雉子」とは「巣のある野原を焼かれると危険を顧みず、自らの身を焼かれても子を守る」ことを云ふなり。
城ヶ入の龍燈寺子安観世音さまと助けた雉子の御蔭にか
その年の秋、初孫無事に生まれ
その男、大いに喜びけり。