新編・伊勢物語 第百二十八段 堪忍袋の緒 星原二郎第百二十八段 堪忍袋の緒 むかし、男ありけり。今も男あり。 その男、かって会社員として勤めゐし或る年の春 人事異動の理不尽さの 横行する頃、怒りを強く感じ歌を 葦(あし)牙(かび)の 角ぐむ春と なりぬれば 堪忍袋の 緒を締め直す と詠み、「ならぬ堪忍、するが堪忍」といふ 古き日本の諺を思ひ出しつつ、怒りが葦原の春の如く わが頭より角が一本どころか、二本、三本と芽生え 来るのを自覚しつつも、会社員の自覚を持ち自制に 努めけり。