第百二十一段 古きテレビ
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、早春のある日、次女の家を訪ねけり。
初孫の安らかなる寝顔を見て心和みけり。
しかして後、次女宅のテレビを見て
画面が時折狭くなるを知りたり。
すると婿殿 テレビの側面を手のひらにて
ポンポンと叩きけり。
すると不思議に元の正常なる画面へと
戻りけり。そを見て面白しと思ひ、歌を
古くなり 映りの悪しき テレビなれ
叩けばしばし 直るがをかし
と、詠み 繰り返す婿殿に、買ひ替へを勧めけり。