新編・伊勢物語 第百十九段 桑名にて  星原二郎 | isemonogatari2のブログ

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第百十九段 桑名にて

 

昔、男ありけり。今も男あり。

その男、平成二十八年の春、弥次さん喜多さんの

「東海道膝栗毛」の世界を訪ね、桑名へと行きけり。

行きて歌を


 熱田より 七里の渡し 渡り来て

   伊勢にし入れば 一の鳥居たつ


 長良川 揖斐川分くる 葦原は

   いにしへ今も 変らざるらむ

 多度山の 奥は養老の 山ならむ

   揖斐の川波 穏しく岸打つ

 東海道 伊勢街道は この先の

   四日市追分に 別るる旅人

いままさに 天へ昇らむと せし龍を

 瓦に彫りて ()()()そびゆる

 広重の 五拾三次の 絵のままに

   石垣残りて 水門(みなと)の桑名

 海荒れて 足留めの旅の 人あまた

   旅籠にあふるる さまも浮かびぬ

 帆掛船 今ぞ潮よし 風よしと

乗り合ひ衆を 数ふる船頭

 大声の「船が出るぞ」の 掛け声に

   急ぎ乗り込む 伊勢帰りかな

 桑名にて「その手はくはなの焼き蛤」

   泉鏡花を 思ひつつ食む

と連作に詠み 桑名の老舗にして、泉鏡花ゆかりの

『歌行灯』の暖簾をくぐり焼き蛤を味はひけり。