新編・伊勢物語 第百六段 孫歌の質 星原二郎第百六段 孫歌の質 むかし、男ありけり。今も男あり。 その男、五人の孫の歌を続けて詠みけり。 歌壇には従来より孫歌を「よし」とせぬ風潮ありけり。 そに逆らいひて、歌を 孫歌は 甘くなるゆゑ 詠まぬがよき とふ説ありぬ 質を問ふべし と詠み、歌の題材を問題視すべきにあらず、 内容・質の高低こそを問題と認識すべしと 思ひけり。 しかして、その男の孫歌もやはり、甘きや?否や?