新編・伊勢物語 第九十九段 宇津の細道 星原二郎第九十九段 宇津の細道 むかし、男ありけり。今も男あり。 その男、「伊勢物語」の第九段の舞台の駿河は 宇津の峠道へとひとり行きけり。 東名高速道路を降り、国道一号線を離れ 時代に忘れ取り残されしが如き峠の古道ありければ、 遠き平安時代の様子を偲び歌を 駿河なる 宇津の山辺の 道細く 行きも戻りも 人に逢はざり と詠みて、この古道を行き来せし 在原業平をはじめ 数多(あまた)の旅人の姿を思ひ描きけり。