第九十五段 葛飾北斎の富嶽三十七番目の浮世絵
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、或る日、セントレア空港より
飛行機に乗りて東へと向かひけり。
暫くの後、窓より鮮やかなる雪の富士見えけり。
眺めつつ かの江戸後期の天才浮世絵師にして
自らを画狂人とも称したる葛飾北斎を思ひけり。
彼の代表作は「富嶽三十六景」。
その作品、いづれも斬新なる構図なれば
歌を
風狂の 北斎なれば 如何様に
機窓の富士を 眺め描かむ
と詠み
彼を江戸時代より現代へとタイムスリップさせて
飛行機に乗せたなれば、さぞや面白き
「富嶽三十七景目」の浮世絵
生まれるであらうとの妄想を抱きつつ
眼下の富士を眺め続けけり。