第八十七段 笹寿司
むかし、男ありけり。今も男あり。
その男、平成二十八年の冬、北信州の
越後との国境にある蕎麦屋へと行きけり。
野草の繊維を 繋ぎ に用ゐる名物の「ぼくち蕎麦」と
笹寿司を所望し、しばし待たされしかど 媼 持て
来て語るを聞きての後、歌を
笹寿司は 謙信公に 献上が
起こりと述べて 媼もて来ぬ
と詠みけり。続けて媼曰く「武田方との戦がために、馬上のまま食することが出来る様にと一口分づつを笹の葉に包みし」と。
上杉謙信公は「馬上盃」が有名であるが
「馬上笹寿司」の
様子を想像しつつ、その男も笹寿司を頬張りけり。