第八十五段 高野辰之記念館
むかし、男ありけり。今も男あり。
その男、平成二十八年の冬
信州は中野の高野辰之記念館を訪ねけり。
高野辰之先生は明治九年
ここ中野の生まれにて
国文学者にして作詞家なり。
「故郷」の他にも、「朧月夜」「もみぢ」「春が来た」
「春の小川」などなどの名作を
世に送り出だしし偉丈夫なり。
まさにその「故郷」の地に錦を
飾る記念館なれば、歌を
「故郷」の 兎追ひたる かの山は
この山ならむ 仰ぎ飽かずも
と詠み、敬意を表しけり。
かの名曲 幼き頃は「兎 美味し」と誤解せし事を
思ひ出しつつ 口遊みけり。