新編・伊勢物語 第八十三段 旅の鞄 星原二郎第八十三段 旅の鞄 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、旅をこそ人生と考へ続けけり。 ある日、翌日からの旅の用意を調へ了へて 歌を 枕辺の 旅の鞄は ふくらみて 明日は出で立つ 心たかぶる と、詠み 鞄の内には、旅へのあくがれと 期待 に 膨らみゐると思ひつつ 眠りに就きけり。