第七十八段 花祭りの里に母を思ふ
むかし、男ありけり。今も男あり。
その男の母親、生れは豊川なれど、大正十五年つまり
昭和元年の寅歳の生まれを祖父母は嫌ひ
奥三河は東栄町の親戚筋へ養女に出され
彼の地にて幼少の頃を過しけり。
東栄町は国の無形文化財指定の
「花祭り」の里なり。そこを訪ねて歌を
奥三河 花祭りの里に 幼き日
母過ししを 偲び来にけり
花祭り 賑はふ声に 混じりつつ
幼き母の 声聴え来る
と詠み、亡き母親も聞きたる
「テーホエ♪テーホエ♪」の
掛け声を聞くにつけても、涙流れけり。
ちなみに豊川の生家も
東栄町の親戚筋も姓は「真田」にて
家紋は「六文銭」なり。
その祖は平家物語に登場の熊谷次郎直実にして
NHKドラマ「真田丸」の真田家直系の末裔と
聞き及びしかど、古文書等の証拠はなく
親から子へ、子から孫へ
更に曾孫へとの口伝なり。