新編・伊勢物語 第七十四段 髪に霜置く 星原二郎第七十四段 髪に霜置く むかし、男ありけり。今も男ありけり。 その男、平成二十八年の寒さ厳しき頃 故郷の豊川へやんごとなき用にて行きけり。 用を済ませ、本宮山を仰ぎ見て歌を ふるさとの 山の姿は 変らねど 眺むるわれは 髪に霜置く と詠み、「光陰 矢の如し」と人口に膾炙したる 言葉を思ひ、その男の父親も同じ年齢の頃には 同じ白髪なりしと思ひ出し頷きけり。